小説の出だしを書きます

設定、プロットは完璧! でも冒頭部分をどう書こうかいつも悩んでしまう。
そんなあなたに代わって冒頭部分を書きます!!(冒頭じゃなくてもOK!)

小説の出だしを書きます 書き始めようとするとストーリーの出だしでつまずてしまう人へ。

サンプル

サンプルの設定はこちら→サンプルプロット

明日には春の日に照らされて咲き誇る事を夢見ているのだろうか。

木蓮の寝床は鎌倉。鶴岡八幡宮寺の池のほとり。
今日は御所で宴でもやっているのだろうか。微かに太鼓の音が聞こえてくるが、木々の眠りを妨げるものではなかった。

満月の光が眩しいほどに反射している水面に一瞬影が走った。
一つ、二つ、三つ。

三つの影は木蓮の下でヒソヒソと囁きあった。
「な、言ったとおり今日は警備が手薄だったろ?」
「次はどうするんだ」
「本殿の鍵は、ほれこの通りここだ。あとはそっと入って失敬するだけだ」

よからぬ企てを企む男たちは、音もなく参道走り、本殿への階段へと進む。
その手前に、また一つ影が現れた。

ーー女か?

そう思ったのは男たちよりも頭ひとつくらい小柄だったからだ。

自分の体よりも長い棒を持って、まるで本殿を守護する仁王のように立っていた。

と、認識するより早く、影は真っ直ぐに駆け寄って来る。

そして一番前にいた男の脇腹に、棒を叩きつけると、その勢いのまま、さらに奥の男の鳩尾をついた。

「ひぃ!」

残った一人は踵を返して逃げ出した。
小さな影はそれを追おうとしたが……

——–ここまで約500文字——-

「こいつ……!」

脇腹の痛みから回復した男は太刀を抜き、切り掛かる。
太刀の切っ先が頭巾に引っかかり、影の顔が満月の光に照らされた。

「子供……?」

まだ幼さを残す少年は、怯みもせずに一歩踏み込み、男の股間、鳩尾、喉を順番に突くと倒れこんだ背中に足を置き、後頭部に棒の先端をコンと置いた。

「ここは神域だ。殺生はせん」

掠れているのは声が変わろうとしているからだろうか。

満月の光を反射する目が、もう一人の男の目と会う。
まるで物の怪と会ってしまったというように、男は怯えた表情のまま逃げ出した。

その様子を見て、少年は舌打ちをして、足元の男の後頭部棒で殴りつけた。

*** ***

朝、鶴岡八幡宮寺の門前を通りかかった野良犬はいつものように柱に己の縄張りを示す印をつけようとした。
クンクンと鼻をこすりつけると、いつもとは違う匂いがした。
誰だ。おれの縄張りに勝手に匂いをつけたのは。犬がそんな事を思ったかはわからないが、スンスンと鼻を鳴らしながら匂いの元を辿ると、人間の足がプラプラと浮いていた。
犬は驚いて鳴き騒ぐと、なんだなんだと近隣の家々から人間たちが集まって来た。

『此者 昨晩深夜 侵入於八幡宮寺』

門前に吊るされた男の横には看板が立てられ、男が昨晩盗み目的で八幡宮寺に侵入した事が、力強い字で書かれていた。

「おい、見たか? 門のアレ」
「見た見た」

境内を掃除する小坊主たちが集まって噂話をし始めた。
「アレ、やっぱあいつかな?」
「ああ、あの字はあいつの字だよ」

小坊主たちはそっと、一人黙々と参道を掃く少年に近づいた。
「おい犬丸。アレお前がやったんだろ?」

犬丸と呼ばれた少年は、小坊主たちを一瞬だけ横目で見て、参道を掃きながら掠れた声で答えた。
「アレとは?」
「門前にぐるぐる巻きで吊るし上げられてる盗人だよ」
「ああ、そうだが?」

おおー、と色めき立つ小坊主を一瞥し、犬丸は掃き掃除を続けた。
「すげぇな! お前強いもんな! なぁ、たまには一緒に稽古しよう!」
「一人でやった方がいい」
「そんな事言わないでさぁ、たまには手合わせしてくれよ」
「手合わせ?」

犬丸がはじめて掃除の手を止めて小坊主たちを向き直った。
「お前らが相手では稽古にもならん。素振りしてた方がマシだ」
「なんだと!?」

犬丸は再び小坊主に背を向けて箒を掃き始めた。
小坊主の一人が自分の持っていた箒を握りしめた。しかしそれをもう一人の小坊主が止めた。敵わないのは分かってる。どんなに悔しくてもきっと一撃も当てる事はできないのだ。

——–ここまで約1000文字——

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